【熊台広場】熊本・台湾・むすび人(許靜珉さん)

2月24日、台湾の半導体メーカーTSMC 社が菊陽町に建設した工場の開所式が開かれました。熊本と台湾を結ぶ定期便も就航し、旅行者も増えています。そこで今回、「KUMATAI SQUEARE(熊台広場)」と題し、熊本と台湾の交流のために活動している方にインタビューしました。

SNSで情報発信、台湾と熊本の交流をもっと深めたい。許靜珉さん

台湾出身で熊本在住9年になる許靜珉(キョ セイミン)さんに話を聞きました。 許 さんは会社員として働きながら、SNSで熊本の情報を発信。Webメディアやセミナーを通して、台湾と熊本の文化交流に関わる活動もしています。

ワーキングホリデーで熊本へ

水俣にて

許さんは高校と大学で日本語を学び、台湾に進出している日本企業に就職。2014年にワーキングホリデー制度を利用し熊本へ。以来、熊本で暮らし続けています。

――日本に興味を持ったきっかけは?

台湾では日本のテレビ番組を字幕付きで見ることができます。日本のアニメやアーティストが好きで、日本語で好きな曲を歌いたいと思い、日本語を勉強しました。高校で日本語のクラスを選択し、大学は日本語学科に進学。台湾で日本の企業に就職したのですが、日本語を使う機会のない部門で、日本へのワーキングホリデーを考えました。

――熊本に来ることになった理由は?

それまで日本を旅行した経験もなく心配で、ネットで調べると部屋を借りるのも大変そうだったので、寮が用意されている杖立温泉の仕事を選びました。不安もありましたが、学生時代に言葉が分からない状態で韓国に留学した経験があり、日本語は話せるのでなんとかなるだろうと勇気を出しました。ワーキングホリデー終了後も日本に残りたくて、熊本の企業に就職しました。

――熊本の印象はいかがでしたか?

熊本には山と海があり、どちらも美しく、飽きることがありません。バイクでいろいろな所に出かけ、楽しんでいます。野菜やお米もおいしい! 周りの台湾人も同じ意見です。台湾では苦手だったニンジンも甘くて大好物になりました。生活のリズムが大都市に比べて、のんびり、ゆっくりしているところもいいなと思います。

――熊本の好きなところを教えてください

熊本はやさしく温かい人が多いです。風景もきれいで、中でも季節ごとに変わっていく阿蘇の景色には、毎回感動します。日本に来て最初に住んだ熊本は、私にとって大事な場所です。熊本弁の響きも好きで、方言だと知らずに熊本弁で話していることもありました。9年も住み続けることができたのは、支えてくれた熊本の人たちのおかげです。

――台湾と日本の文化の違いを感じたことは?

台湾の朝食

台湾には屋台文化があり、夜遅くまでお店が開いています。洋服などのお店や病院も、夜9時や10時まで開いているので、日本のお店は閉まるのが早いと感じました。食事は外食が多く、朝ごはんも外で食べることが多いです。

台湾では冷たいものはあまり体によくないと考えられているので、飲食店でお冷やが出てきたり、お弁当を冷たいまま食べたりするのにはびっくりしました。台湾では学校に大きな蒸し器があり、お弁当を入れておくと、お昼には温かいものを食べられます。

台湾メーカー進出で感じる変化の兆し

台北の問屋街「迪化街」

台湾の半導体メーカーTSMC社が熊本に進出。熊本と台湾を結ぶ定期便も就航し、台湾からの移住者や旅行者の増加が期待されています。

――台湾から熊本への旅行について

直行便ができ、旅行しやすくなりました。台湾ではくまモンが大人気で、日本のキャラクターで一番有名なのではと思います。熊本のキャラクターだと知らずに好きな人もいるようです。「くまモン誕生祭」のイベントに来る台湾人も多いんですよ。

――TSMC社の進出で、熊本での変化を感じることはありますか?

昔よりも台湾について注目されていると感じます。熊本で台湾フェアや交流イベントなどが開催され、台湾の食べ物や商品の販売も一気に増えてきました。街中で台湾の言葉が聞こえてくることもあり、観光客も移住者も増えていると実感しています。

――外国人観光客への対応について

私が熊本に来た頃に比べると、外国人への対応やコミュニケーションの手段は増えていると思います。ただ東京や京都などに比べると外国人に慣れていない方が多く、翻訳アプリに対応しているお店も少ないため、言葉が通じなくて困ることもあるようです。台湾ではビーガンやベジタリアンの人も多いのですが、飲食店で食べられるものが分からないという話も聞きます。

――台湾から来る人に熊本のどんな所を紹介したいですか?

阿蘇をドライブ

おすすめはたくさんあるので、何が好きかを聞いて紹介したいです。温泉が好きだったら黒川や杖立、お茶が好きなら岳間茶や水俣の和紅茶、海鮮が好きなら天草。海ならば天草や水俣、芦北、山は阿蘇。古いものに興味がある人には山鹿の豊前街道を。素敵なコーヒー屋さんも紹介したいです。台湾で知られていない所も多いので、もっと熊本のいい所に行ってほしいです。

水俣の海

台湾の言葉と日本語で熊本の情報を発信

バイクで山鹿へ

熊本に住み9年になる許さん。SNSで熊本のカフェ情報や、熊本での生活について発信しています。

――繁体字(台湾の言葉)と日本語で熊本のカフェを紹介するSNS。始めた理由は?

職場に台湾出身の同僚もいるのですが、退職し、東京や大阪へ行ってしまう人が多いんです。熊本は不便、お店や情報が少ないと言って辞める人もいて、残念に思っていました。私はカフェやイベントなどで知り合いができ、熊本での暮らしが楽しくなりました。お店の人やお客さんと交流して熊本を好きになれば、長く住めるようになるのでは、と思ってカフェ巡りのInstagramを始めました。

台湾からの観光客に熊本の魅力を伝えたいと思ったことも理由の一つです。道に迷ったり、何かを探していたりする台湾人を見かけると声をかけるのですが、福岡から日帰りで来て、熊本城だけ見て帰る人も多いんです。熊本にはもっといい所があるのに残念で、何泊かして熊本を楽しんでほしいと思いました。

――もう一つのSNSはどんな内容ですか?

熊本生活の物語というテーマで、こちらは繁体字だけの投稿です。外国人にとって熊本での暮らしには不安なことが多いと思います。実際に住んでいる私が楽しく暮らしている様子を見たら、台湾から熊本に来る人も安心できるかな、と思って始めました。熊本のよいもの、面白いと感じたこと、出会った人とのエピソードなどを投稿しています。「熊本にはいい人が多いよ」と伝えられたらと思っています。

熊本と台湾を結ぶかけはしに

台湾のカフェにて

熊本で台湾への関心が高まる中、許さんの活動の幅も広がっています。

――会社員として働きながら、さまざまな活動を行っているそうですが

台湾の人の役に立てればと思い、熊本へ来る台湾人や外国人のための情報サイトで、記事を執筆しています。また、熊本在住の台湾人たちのLINEグループがあり、情報交換をしています。運転免許や携帯電話の手続き、ゴミの分別や病院について、飲食店やスーパーなど、生活情報と観光情報が求められているようです。

――日本人を対象にしたセミナーで講師をすることも

台湾と日本の文化の違いを紹介し、台湾について気になること、知りたいことに答えるセミナーです。台湾人が急に増えて、熊本の方も不安があると思うので、その不安を解消できればと思っています。無理に台湾の文化に寄せるのではなく、熊本の良さはそのまま活かし、その上で文化の違いを知り、受け入れてもらえるとうれしいです。

――熊本から台湾に行く人も増えると思いますが、観光客へのおすすめは?

台湾の市場

日本のお茶とは違うので、台湾のお茶をぜひ体験してほしいです。コーヒーが好きなら、カクテルのようなコーヒーも面白いと思います。フルーツジュースとコーヒーをミックスする飲み方が流行っていて、グァバやパイナップルのコーヒーが意外においしいんです。珍しい果物などが並ぶ市場も面白いですよ。台湾では朝ごはんを外で食べることが多いので、ぜひ朝食も食べてみてください。

先日、台湾に帰省したのですが、久しぶりで観光客のような感覚で楽しめました。昔は良さが分からなかったけれど、日本の人が興味を持ってくれるものは、確かにいいなと思えました。熊本に住んだおかげで、自分の国をもっと好きになれました。

台湾の街並み
台湾名物の臭豆腐

――熊本でこれから取り組んでみたいことはありますか?

小さなマルシェのような個人的な台湾フェアができたらいいなと思っています。台湾の本場の食べ物を紹介し、その発祥や食べ方、どんな時に食べるのか、台湾の生活や豆知識なども伝えられたらと思います。

他にもコーヒーが好きなので、台湾と熊本のコーヒー店の交流ができたら、新しいものが生まれるのではと思っています。熊本の紅茶と台湾の紅茶など、特産品の交流にも興味があります。台湾の旅行者向けに、普通の観光コースとは違うミニツアーを企画できればとも考えています。

――台湾と熊本の交流について

お互いの国に興味を持つ人が増えて、ありがたいことだと思います。旅行する時には、ぜひ地元の人とも話してみてください。文化の違いで驚く場面もあると思いますが、交流と説明が大事だと思っています。違いを説明することで、お互いを理解できます。台湾と熊本がもっともっと深く交流できたらいいなと思います。


許靜珉(キョ セイミン/HSU CHING MIN) さん

台湾で日本語を学び、2014年にワーキングホリデーで熊本へ。その後、熊本の企業に就職。Webメディアでの執筆やセミナー講師などを通して、台湾と熊本の文化交流に貢献。SNSで熊本のカフェ情報や熊本での生活について発信。日本でのニックネームは「カナ」。

Instagram 

・熊本カフェ巡り(熊本美食情報) @taiwanese_kumamoto_foods  ※日本語と繁体字
・熊本巷仔內  @taiwanese_kumamoto_life ※繁体字のみ


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ゆうプランニングでは、台湾で一般的に使用されている繁体字への翻訳や、台湾インバウンド対策、マーケティング支援など、お手伝いいたします。お気軽にお問い合わせください。

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